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「脱皮」の怖さと高揚感〜『服を着るならこんなふうに』

店員に積極的に声をかけられるのは苦手だ。

かつて石丸電気では、商品をじっくり選んでもらうため、店員から声がけをしないやり方を採っていた。

その考え方には、心から賛同したものだ。

必要ならこちらから聞く。

自分で選択し、身銭を切って学びたい。

酒も、食事も、旅行も、学問も、友情も、いつだってそうしてきた。

 

なのに服になると、途端に店員に押し切られる。

主導権を奪い返そうにも、まだ自分のスタイルが構築されていないので、ヤラレ放題やられる。

その結果、よく転ぶこともあるのだけど、投資額が大きい割に満足度が得られず、結果脚が遠のいていく。

ゾゾタウンがこれほど流行るのは、それなりの理由があるのだ。

 

話が大いに逸れた。

 

20代後半の主人公は、中堅企業の営業職として仕事面では相応の評価を得ている。

しかしストレスフルな面も否定できず、その癒やしは週末のゲーム三昧。

服はスウェットとパーカーで、外出時にはストレートのジーンズ。

典型的な、センスのないオッサンまっしぐらルートである。

しかし、小学校の同窓会の打ち合わせで久々に顔を合わせた友人たちは、なぜかキラキラして見えるのだ。

 

どうやっても追いつけないのではないか?

こいつらはどうせ高い服を着ているだけではないか?

そんな金があったらオレはゲームを買うから、それでいいよ。

 

そんないつもの思考回路は、妹からの一言で動きを止めるほどには衝撃を受けていた。

妹による「できることから始める」ファッション改革が、某有名ファストファッションブランドからスタートする。

「ここで?高くない服で?」それでもいいというのだ。

 

自分の見てくれが全く気にならない、という男は、まずいないだろう。

ただ、理想への到達までの道筋が見えなさ過ぎる。

「個性の時代」を声高に言える世相も、後押しする。

けど、居心地の悪さと劣等感を隠しているだけなら、本書を片手にワンアイテムずつ自分の理想を造り始めてほしい。

「楽しい」と感じ始めたら、きっと新鮮な高揚感が得られるはずだ。