「30歳以上は信じるな」ではなく、「30歳以上の足掻きは理解できない」のだろう―「DON'T TRUST OVER 30」

 今年、36歳になった。

職場の同僚からはアラフォーと呼ばれ、幼いころからの友人たちとは重ねてきた時間を笑い合って振り返る。

でも、今の自分に安堵する瞬間があるかといえば、相も変わらずまったくない。

一方で、放っておいた心身の不調は、順調に顕在化している。

 

昨年から、まるでせきを切ったように肝臓か胃が腸が、身体の各部に不調が一気に押し寄せた。

20代では「まだまだ平気だろう」と思っていた自分の健康に対する自信と安堵は、完全に押し流された。

健康不安は日常のあらゆる面に悪影響を及ぼす。

惨憺たる仕事ぶりを披露し、職場の上司、同僚、社外の関係各位へ、多大なるご迷惑をかけてしまうこともあった。

本当に悔しく、申し訳なく思う。

 

この短編集には、30を過ぎた「信用出来ない」者たちが登場する。

言葉にできない煩悶を胸に抱え、夜の街を漂い、もう誰もいなくなった自分の居場所を振り返りつつ、新たに落ち着く先もないままにさまよっている。

友人も、恩師も、かつて愛した人も、それぞれに居場所を見つけている。

自分だけが青春を引きずり、大人になることをためらい、でもどこかでこの漂流を終わらせたいと思っている。

 

それが顕著に示されている表題作は、作者の私小説と言えるものだ。

 

「冬の海まで車をとばして、24時間砂を食べていたい

長い線路を一人歩いて、そっと枕木に腰をおろしたい」

 

そんな陰鬱な気持ちを引きずりながら、それでもかつて目指した自分のオリジナリティを求めて足掻く。

目を背けてきた家族に、恋人に、世間に、自分がぶつけて来た成果をつきつける。

 

しかし、若い担当編集者からの言葉は、あまりにも正論で、心をえぐる。

「何をロマンティシズムなこといってんですか?」

「ハッキリ言ってあなたのできる事はもう決まってると思いますよ」

「それを見せてきたから今のあなたの評価があるんです。読者もそれを望んでるんです」

「違うものが読みたいときは違う作家を読むだけです」

 

それでもなお、崩折れてしまった身体をもう一度ゆっくりと起こし、うつむきながらも歩き慣れた生き方へ復帰していく。

 

自分には、作者の物書きに対する姿勢が、あまりにも似すぎてぞっとした。

彼のようにはなれないしなるつもりもないが、おそらく同じように時に打ちのめされ、自己矛盾にもがき苦しんでいるのだろう。

それでも幼いころに芽生え育んできた、「書くことで生きていく。読み手の評価で喜びを得たいから頑張る」ために、筆を取るのだろう。

 

彼の作品を紹介するはずだったのに、まるでラブレターのようになってしまった。

それでも、他人事では捉えられない作品だから、あえてこの体裁で紹介したい。

 

 

 

DON’T TRUST OVER 30 (星海社文庫)

DON’T TRUST OVER 30 (星海社文庫)