痛みを残しつつ、変化する……『リストランテ・パラディーゾ』

イタリア・ローマにある人気のリストランテガゼッタ・デッロルソ』。

居心地の良さと極上の料理に加え、個性豊かな従業員たちも人気の一因である。

採用条件は、「老眼鏡をかけていること」(オーナー夫人の趣味である)。

そんな平和なリストランテに、オーナーの知人を名乗る活発な女性・ニコレッタが訪ねてくる。

彼女は、オーナー夫人が前夫との間に設けた娘だった……。

 

こう書くと、「はてさて、どんな母娘間での泥沼話が展開されるのか」と思いきや、話の軸となるのは、ニコレッタが恋した『ガゼッタ・デッロルソ』のカメリエーレ長・クラウディオとのやり取りである。

絵に描いたような老紳士であるクラウディオにとって、ニコレッタの快活かつ真っ直ぐな想いをいなすのは造作も無い……こともない。

彼は、店の常連であり、オーナー夫人の友人でもある元妻がいる。

 

「彼女の仕事が忙しくなって、行き違いもありまして」

「私といた頃よりも充実感が表情からもわかる。そんな彼女を見ていると少し複雑な気持ちになります」

こうして、ニコレッタとクラウディオは「見捨てられた者どうし」という共通項を得る。

それでもなお、愛の形に悩むニコレッタにとって、やきもきする日々が続くのである。

 

オーナーを含む従業員たちの恋愛事情は複雑である。

若いころのように勢いに任せることはできず、自分の力で抗いきれないものも含まれる。

彼らの姿や言葉は、ニコレッタに人としての幅をもたらし、母との和解、そしてクラウディオとの新しい関係に至る。

「……もういいか」

「長くかかってすまなかった」

 

人は経験してきたものを捨てることはできない。

そこから何かを糧としていくしかない。

時に痛みを伴い、自分の過去の一部を否定することも強いられる。

それでも、痛みを残しながら、変化するのは美しいと言いたい。

本作でも大きな役割を果たすワインと同じだ。

時間と季節を経るからこそ、逞しく美しく、味わい深くなる。

 

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)