君の居場所はここにある……『水の色 銀の月』

ーこんな晴れた日にも、雨の降ってる人はいるんですよー

 

主人公、亜東森は美大の6年生。

絶賛留年中である。

男前とは程遠い老け顔も、人懐っこさと気遣いから女性受けが良く、友人にも囲まれ、相応の幸福に包まれている。

傍から見れば、「お気楽なヤツ」であり、友人にもそう諌められることがある。

 

そんな彼の抱えるモノが次巻で見えてくるのだが、本稿ではあくまで1巻を紹介したい。

 

駅前の雑踏野中、彼は趣味の弾き語りをしていた。

ジーンズを5年ぶりに洗濯する気になったほどの晴天の日。

ふと歩道橋を見上げると、そこには青に異質な黄色を塗りこむ、レインコートを着た少女。

眉をひそめ、景色から消そうとする群衆。

しかし、森はそれを「なんだかまぶしかった」と感じた。

その後、レインコートを着ない彼女と再開した森は、彼がいつも女性に対してするように、名を尋ねる。

「星」と名乗る彼女の名前を「なんて素敵な!」と言う森。

お調子者のいつものナンパと思いきや、家に招いて仲間に星を紹介した後の二人きりの帰路で、声をかけた理由を告げる。

 

「とても素敵な黄色いレインコートが、なんだか、かなしかったから」

 

彼女にとって、レインコートで防ぎたい「雨」が何なのか。

異質とはいえ、鮮やかな黄色は、なぜ「かなしかった」のか。

 

星は、産まれてくるのを望まれていなかった。

彼女が母の胎内に居た時、両親の関係は既に冷えきっていた。

彼女が居るがために、家に縛られていると感じ、母は心を曇らせていく。

その雲は、鋭利な雨となって、彼女に叩きつけられた。

「どうして私はここにいるの?」

 

だから森は、彼女にまとわりついた、雨の雫を優しく拭う。

 

「僕は君がずっとすきだ」

「だって君が君だから。他の誰でもなく」

 

誰にでも笑顔を振りまく森が、他ならぬ自分を必要としている。

星にとって一番欲しかったものを、真正面から整える。

それは一方的な施しではなく、森にとっても不可欠だから。

 

続巻では森視点の語りもあり、是非とも通読していただきたい。

 

 

 

 

 

 

ご挨拶

小説を書いておりましたが、少々行き詰まりを感じたので、

好きな作品紹介サイトに変更しました。

(小説も保存してありますので、いつか書き始めると思います)

 

作品評は、あくまでも管理人個人の見解ですので、

ご承知おきのほど、お願い申し上げます。